the grounds

- 境内案内 -

十牛之庭

Jyu-gyu no niwa

牛を追う牧童の様子が描かれた「十牛図」を題材にして近世初期に造られた池泉回遊式庭園。

周囲の山々を取り込んだおおらかなつくりは尼寺として長い歴史を持つ圓光寺の家風そのもの。

庭園南側には洛北最古の泉水、栖龍池があり、

先人たちはここからの眺めを絶景として褒め称えたという。

十牛図に描かれた牛とは、人間が生まれながらに持っている仏心をあらわしている。

牧童が禅の悟りにいたるまでの道程であり、懸命に探し求めていた悟りは自らのなかにあったという物語だ。

修行道場としてこれまで多くの雲水たちが参禅の日々を過ごした圓光寺。

厳しい修行のなか、雲水たちは僧堂の前に広がるこの庭園をどのような心持ちで眺めていたのだろうか。

水琴窟

Suikinkutsu

静寂とした寺内にかすかに響く清音。

緑深く、水豊かな洛北ならではの趣を演出する水琴窟は十牛之庭の清涼となっている。

縁が広い盃型の手水鉢を用いた水琴窟はあまり例が無く、

古くから「圓光寺型」として多くの趣味人に愛されてきた。

一滴、一滴が奏でる澄んだ音色は

心地良い余韻を残し、耳にする者の心を落ち着かせる。

圓光寺を愛した多くの絵師たちもこの音色を楽しみ、画道の励みとしたのだろうか。

奔龍庭

Honryutei

白砂を雲海に見立て、天空を自在に奔る龍を石組であらわした平成の枯山水。

龍の頭部と背中付近にそびえ立つ石柱はかつて井戸の部材として使われていたもの。

端に開けられたいくつもの穴にその名残を見つけることができる。

荒く切り立った石柱は龍の周囲に光る稲妻をも表現し、庭園全体に躍動感を与えている。

通常、庭園の境界を示すために配されるはずの留め石は置かれずに

この庭園はあえて未完のままとされている。

庭園を見る者がその余白を埋め、それぞれの心のなかで完成させることを期待した作庭意図だろうか。

本尊 千手観世音菩薩坐像

Honzon

優美で穏やかな表情が印象的な本尊、

千手観世音菩薩坐像は鎌倉初期の天才仏師、運慶の作と伝えられている。

千手観音菩薩とは、あらゆる手を尽くして生きとし生けるものすべてを救済する慈悲の象徴。

自由に生きた文人墨客に愛され、

尼寺として数多くの女性を包み込んできた圓光寺にふさわしい本尊といえる。

流れるような天衣の彫刻に加え、

重厚感のある台座や装飾品の錺金具など随所に細緻な技が施されており、

開山当時の工芸技術の高さがしのばれる

坐禅堂

Zazen do

かつて尼僧たちが修行に励んだ坐禅堂はいまも静謐な姿のまま。

堂内を流れる冷たくも穏やかな空気は、ここが自己をみつめる場所であることを思い知らされる。

陽光をわずかに取り入れる火灯窓は大陸から伝来した禅宗様の特色。

学僧として名高く、生涯をかけて禅の教えを追求した

開山・三要元佶禅師の思想を色濃く残した建築といえる。

坐禅は身体を調え、呼吸を調え、心を調える。

禅門の悟りは「不立文字」といわれ、言葉や文字では語ることはできない境地とされている。

禅僧の終わりなき修行の日々を体感することができる貴重な空間だ。

応挙竹林

Ohkyo chikurin

十牛の庭の奥の孟宗竹林は昔、円山応挙がよく訪れた竹林である。

瓜生山の借景と相まって、十牛の庭の奥深さを感じる。

 

禅語にある「清風動脩竹」

(せいふうしゅうちくをうごかす:あるがままの姿は美しいが、それに執着しないことこそ素晴らしい)

のとおり、風に吹かれ雨に打たれる竹林の情景は、常に変化を続ける人間のあり方そのもの。

 

円山応挙はこの竹林を「雨竹風竹図」として描き残した。

刻一刻と表情を変える竹林に、禅門の本質をみたのかもしれない。

富岡鉄斎 米點山水図『観楓山水図・脩竹清風図』

Tomioka Tessai

本堂方丈の襖絵「観楓山水図・脩竹清風図」は南宗画の巨人、

富岡鉄斎が明治十八年(1885)に紅葉の圓光寺を訪れて描いたもの。

米點とは、水墨の点を打ち重ねて描く南宗画の技法。

四本の襖両面を大胆に使って描かれたこの山水画では雄大な山々や木々がすべて点描で表現されている。

署名のなかには「於圓光精舎」と記されている。

精舎とは寺院を指すとともに、学びの場を意味する言葉でもある。

学問所として興った圓光寺は、各時代を通じて絵師や文人たちが集い、語り合うサロンでもあったたのだろう。

洛北からの景色

The view from the Rakuhoku

境内山上に登ると、開基、徳川家康公を祀った東照宮がある。

さらにその先には、洛北を一望することができる広く大きな眺め。

遠く北山や嵐山の山々をも眺望するこの場所は知られざる圓光寺の名所だ。

夕刻には西の空に落ちる太陽が京都の街を真っ赤に染めて、

足元に見る境内や竹林は昼間とはまったく違う表情を見せる。

Copyright  enkouji. All Right Reserced.